月経困難症
月経困難症

月経困難症とは「月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状」とされています。いわゆる月経痛である下腹部痛や腰痛が主ですが、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、いらいら、下痢、ゆううつなどが見られます。
日本人女性では、月経痛がほとんどない方は21%、月経痛を感じるが日常生活が普通に行える方が46%、鎮痛剤を飲めば日常生活が普通に行える方は27%、鎮痛剤を飲んでも日常生活に支障を来す方、つまり寝込んでしまうような方が6%と報告されていますから、毎月160万人もが寝込んでいるということになります。
月経困難症は、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの疾患に伴う器質性(続発性)月経困難症と、原因となる疾患が特定できない機能性(原発性)月経困難症に分けられます。前者は基本的に原因疾患の精査・加療が必要です。
機能性月経困難症は若い方に多く、初経後、1年で既に半数の方が月経困難症だという報告もありますから、我慢することなく受診をお勧めします。
対応や治療法としては、下記のように様々な方法があります。
夜更かしせずにしっかり寝る、運動する、3食・・特に朝食をきちんと食べる、ストレスを発散するなどの生活習慣の改善は効果があります。月経困難症以外へも有効です。
痛み止めを服用することは重要ですし、それで治まるのであれば楽だと思います。
鎮痛剤の効果は人によりさまざまですので、いろいろ試してみて、自分に合うものを見つけることが大切です。また、服用から効果が出てくるまでどうしてもタイムラグ、つまり時間差がありますから、効かない場合には痛みの有無にかかわらず、月経開始から服用するのも良い方法です。そんな飲み方では身体に悪いという意見も聞こえてきそうですが、せいぜい1週間ほどの服用ですから、現在、日本で使用されている鎮痛剤では問題にならないと思います。
次に考慮されるのは漢方薬です。中国4000年の歴史がありますから、期待はできます。「毎日飲む」という飲み方と、「月経前の4-5日から月経中にかけて服用する」という飲み方もあります。しかし、月経不順の方には、月経前から飲むという方法は向いておりません。
女性ホルモンであるエストロゲンと合成黄体ホルモン(プロゲスチン)が入った錠剤を毎日服用する、いわゆる‘ピル’は月経困難症の治療効果が高いことが知られています。
過多月経や月経不順にも有効ですし、ある種のピルはPMS(月経前症候群)へも効果があります。また、ニキビや多毛症への副効用も知られています。服用方法は主に周期投与と連続投与があります。
薬理効果としては、子宮内膜を薄くすることから、月経量(生理量)が減り、期間が短くなることが多いです。月経が来なくなることも1%未満程度ありますが、妊娠が否定されれば継続可能です。よくある副作用として、飲み始めには吐き気があることがありますが、通常慣れてきておさまることがほとんどです。その他の副作用としては、不正性器出血や肝機能障害にも注意が必要ですが、最も重症な副作用には血栓症という危ない副作用がごく稀にあります。
ピルの内服は、誰でも内服できるわけではありません。40歳以上は慎重投与になりますし、喫煙している方や血栓症の既往歴がある方は飲めません。その他、注意が必要な方もいらっしゃいますので、外来担当医へご気軽にご相談ください。
‘ピル’はホルモン剤なので、定期的に肝機能のチェックが必要です。
黄体ホルモンであるジエノゲストの単独製剤を月経開始時から飲み続ける方法です。
疼痛改善効果も高く、ピルのような血栓症のリスクは低いため、リスクのある方やピルが難しい方には使いやすいお薬です。ただし、骨量低下の可能性や不正性器出血の可能性があり、無月経になることもありますが、こちらも妊娠が否定されれば継続可能です。こちらもホルモン剤なので、定期的に肝機能のチェックが必要です。
ただし、本来は1年以上の有効性及び安全性は確立していないので注意が必要です。

(ミレーナ:バイエル薬品
ホームページより引用)
もともとは避妊用の器具ですが、月経困難症や過多月経にも保険適用があります。写真のような器具を子宮口から子宮腔内に挿入する方法です。月経終わりかけ、あるいは直後に外来で挿入できます。出産経験のある方であれはスムーズに挿入できることが多いですが、出産経験のない方や子宮口が狭くなっている方では難しい場合もあります。挿入時の痛みはそれほどではない場合がほとんどですが、上記のような挿入しにくい方の場合には痛みを強く感じる場合もあります。腟の中にtailと呼ばれる短い糸が出ますが、通常は気になりません。
月経(生理)を起こす子宮内膜が薄くなるため、月経量(生理の量)は次第に減る場合が多いですが、不正性器出血が起こることがあります。時間経過とともにミレーナが押し出されてしまったり、筋肉の中に食い込むことがあるため、定期的なチェック・外来受診が必要です。
有効期間は5年ですから、5年後には抜去と、必要に応じて再挿入をします。
月経を薬剤にて止めてしまう方法です。月経開始時から毎日服用や施行する飲み薬や点鼻薬、1カ月に一度の皮下注射する方法があります。薬剤によって完全に月経が止まるまでの期間に差があります。保険上は最長6カ月しか施行できませんが、6カ月施行後に月経が再開すれは再び施行することができます。
エストロゲンレベルを低下させるため、更年期症状に似た症状や抑うつが出現することがあります。骨量も減りますが、中止してからの期間で戻ることが多いです。繰り返し施行する場合には骨量測定を行います。
それぞれ治療法について、患者様のご希望や病状に合わせて出来る限り対応致しますが、患者様によっては難しい場合や金銭的なご負担も異なることがございます。詳細につきましては、外来担当医へご気軽にご相談ください。